源氏物語とともに中古文学の代表作品であり、後の世の日本文学に大きな影響を与えた枕草子。ジャンルは随筆、つまりエッセイにあたる。枕草子が制作されてから時間が経ち、鎌倉前期に書かれた鴨長明の方丈記と約100年後に吉田兼好により書かれた徒然草の3つで日本三大随筆として知られている。江戸時代に生まれたエッセイは階級社会を反映して、色々なパターンが生まれ、後期には日記的な書き方が主流となった。それ以後も多くの随筆が書かれたが、江戸時代中後期に書かれた日記風随筆が現代のエッセイの流れを作ったとされている。現代エッセイは作家ではスポーツ選手などの著名人が多く、人生で経験したことをもとに作家の考えを綴っているものが多い。おそらく一般人からすれば知ることのできないスポーツ選手などの著名人の気持ちを知ることができるエッセイだからこそ大きな分野になったのだろう。最初にエッセイの語源になったのはフランスの有名な哲学者であり思想家のミシェル・エケム・ド・モンテーニュが制作したエセーという本で、実は日本三大随筆の3作品よりもかなり後にできた作品である。日記的な内容で比較的ライトな日本国内の随筆とは異なり、ミシェル・エケム・ド・モンテーニュの書くエセーは宗教戦争時代を生きる人々を深い考察の中で表現しており、哲学的な面も多い作品は現代でも非常に評価が高い。当時のヨーロッパに影響を与えた作品エセーは日本でも有名な哲学者のパスカルやデカルトにも大きな影響を与えたようである。作家の体験や知識を基にして書かれるエッセイはフィクションの小説とは違って、時代や生活の環境などの影響を受ける文学と言えるだろう。日本国内のエッセイは作家の感性に多く触れるものの、やや内容的にはライトなものが多く読みやすい作品が多い。欧米のエッセイはテーマに関して深い思索を経た書き方が主流であり、内容も日本とは印象が違って論文的なものが多い。エッセイという分野は一緒だが、執筆されている内容は作品によって国によって違う面があるのである。
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